業務上腰痛の労災認定基準
2025.03.31更新
厚生労働省では、労働者に発症した腰痛が業務上のものとして労災認定できるかを判断するために、 「業務上腰痛の認定基準」 を定めています。
【認定要件】
腰痛を「災害性の原因による腰痛」と「災害性の原因によらない腰痛」に分けて認定要件を定めており、それぞれ認定要件を満たす場合に労災補償の対象となります。なお、労災補償の対象となる腰痛は、医師により療養の必要があると認められたものに限ります。
■災害性の原因による腰痛
負傷などによる腰痛で、次の要件をどちらも満たすもの
✓腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
✓腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
災害性の原因による腰痛は、腰に受けた外傷によって生じる腰痛のほか、外傷はないが突発的で急激な強い力が原因となって筋肉等(筋、筋膜、靱帯など)が損傷して生じた腰痛を含みます。例えば重量物を運んでいて転倒した等の突然の出来事で腰に急激な力がかかったことによるものや持ち上げる重量物が予想に反して重かったり、逆に軽かったりする場合や不適当な姿勢で重量物を持ち上げた時にように、急激な強い力が腰に異常に作用したことにより生じた腰痛も災害性の原因による腰痛となります。
■災害性の原因によらない腰痛
✓突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるもの
災害性の原因によらない腰痛とは日々の業務による腰部への負荷が徐々に作用して発症した腰痛をいい、その発症原因により、次の①と②に区分して判断されます。
①筋肉等の疲労を原因とした腰痛:次のような業務に約3ヶ月以上従事したことによる筋肉等の疲労が原因で発症したもの
・約20㎏以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務(港湾荷役など)
・約20㎏以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務(配電工の柱上業務など)
・長時間立ち上がることができず、同一の姿勢を持続して行う業務(長距離トラックの運転業務など)
・腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務(車両系建設用機械の運転業務など)
②骨の変化を原因とした腰痛:次のような重量物を取り扱う業務に約10年以上にわたり継続して従事したことによる骨の変化を原因として発症したもの
・約30㎏以上の重量物を、労働時間の3分の1程度以上に及んで取り扱う業務
・約20㎏以上の重量物を、労働時間の半分程度以上に及んで取り扱う業務
※腰痛は、加齢による骨の変化によって発症することが多いため、骨の変化を原因とした腰痛が労災補償の対象と認められるには、その変化が「通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに超える場合」に限られます。
※上記①に示す業務に約10年以上従事した後に骨の変化を原因とする腰痛が生じた場合も労災補償の対象となります。
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